2014年3月8日土曜日

6 : melancholicな元カレのはなし : The story about melancholic ex boyfriend





最近わたしは趣味で、ネット上に転がっている動物や人間の赤ちゃんがうんちをしている動画と、
同じようにネット上に転がっているキスシーンの動画をつなぎ合わせて

新感覚な芸術的ムービーを作成中である。

今のところ3分くらいの長さになったこのムービーを友達のひっちゃんに見せたら、

うつ病なのか?

と質問された。




是非これをベートーベンの運命(交響曲第5 ハ短調 作品67)の長さまでつくりあげて、
この曲のミュージックビデオとしたいのだが、
35分間もあると知って
あきらめそうになっている。


なぜこのムービーをつくろうと思ったかというと、
4年前の真夏にイタリアの田舎街のサンタカンジェロというところのプールで、
隣の席に座る赤ちゃんのおしりからうんちが出る瞬間を見たことがきっかけだった。



サンタカンジェロに初めて行った夏、ものすごい暑さのイタリアの夏に
なぜかわたしは世田谷の裏路地を感じていた。
(多分蝉がないてたせい)


そこでは昼間街のプールであかちゃんがうんちをする瞬間をみたり、
夜には金色に輝く広場に、うようよと集まるイタリアっこたちと
ワインを飲みまくったりしていた。


金色の広場を眺めながら、こんな場所出身の恋人がいたらいいかもしれないな〜なんて思っていたら
その数日後パーティーでその場所出身の男の子と出会って、
数カ月後の冬には彼と恋に落ちて付き合うことになる。



当時彼から来たメールを翻訳


だってイタリアの全部どこだって、ぼくたちはいかなきゃいけないんだよ!!!
全部一緒に行くよ!!!
クリスマスは親戚みんなが来るパーティーがあるし、しかも誰も英語話せないんだよ!!!
あと大晦日には、700人ひとがくるパーティーがあるんだよ!!行かないと!!!



というわけで私はその年の冬までに貯めたちょっとのお金を全部はたいて
1人で1ヶ月彼の国に行くことに決めた。


その恋が20代最後の大恋愛になると信じていたからだ。



彼の名前は英語読みで、ユージという。
かわいいtenderな呼び方だからそうよんでいいんだよと言われた
ひとりで夜自分の部屋でmelancholicな音楽をきいてmelancholicな気分になって泣くのが好き。
非生産的な感情を愛するヨーロピアンボーイで若いときはEmoだったから
背中に大きな羽のタトゥーを入れたかったけど入れなくてほんとに良かったとぶるぶる震えてた。
ナイーブだけど変わったことが好きな男の子。


イタリアの南の方にサルディーニャ島という島があって、
そこには昔からその島に住んでいる人たちがまわりの国々とは違う独特の文化を持っている。
ものすごい腐り方をして虫がわいたこの世のものとは思えないほどおいしいチーズを、
虫ごと食べる習慣があって、
今では危険なので法律で禁止されているのに
みんなマフィアと闇取引してそのチーズを高値で売買するそうだ。
ユージのお母さんはその島の出身で、だから彼の眼も髪も濃い黒で顔だちもすこし土着的だった。


例えば遠く地球の裏側にいる誰かと思いを通わせたいとか、
火星にいるかもしれない異星人だけど自分とうり二つの生命体に会ってみたいという
人類が始まってからずっと人間が思い続けているプリミティブな願いを私も持っていて、 


彼の眼の色や髪の色や、好きな音楽やこどものときみていた映画が同じだったこと、
ふたりとも母国語じゃない言葉でバカみたいなことばかり言い合える時間が
わたしのそのプリミティブな願いを満たして、

そのときのわたしは彼と一生世界中を回ろうと勝手に決意して、
彼の子どもを産むことに決めてしまっていた。





一度、どうしてそんなにぼくのことがいいの?ぼくたちどうしていったらいいんだろう?てきかれたことがある。


その時わたしは、わたしは目の前にあなたがいて、その小さな頭と心で一生懸命未来のことを考えてるあなたを見てると、たまらなく愛しくなって、この人が未来のことを一生懸命考えているのを、まだまだできるだけ長く、近くで見ていたい、って思うの・


と本当に心から言ったことがある。
我ながらなんて愛のある言葉だったんだろう。






わたしに新しいボーイフレンドができたことを元カレにJRのホームからスカイプで伝えてみた、
そうしたら、



電車の行く音・JRのあかるいへんな発信音・車の喧噪・悪い電波のせいでとぎれとぎれの声

ラブリーな東京から伝えられてくるのは自分への愛のメッセージではなく・


そのことはぼくをてっっていてきにmelancholicにおとしめた。


いまはぼくは冬のベルリンにいて・
毎日は大雪にすっかり包まれて・
冬のヨーロッパの中心地に閉じ込められたみたいだ・

ぼくのかわいい元カノは東京生まれの東京育ち
月から来たエイリアンのような女の子だった・
彼女の新しいボーイフレンドにはぼくはまだあったことはないけど、
若くてちょっと、ワイルドなタイプらしい。



僕の知ってる日本語


ゲンキ  ゴメンネ  マタネ  アリガトウ  ドウゾドウゾ  クソ  バカブスウッソ くらい


バカブスウッソ ドウゾドウゾ クソ! 
マタネ アリガトウ ゴメンネ 
ゲンキ! ゲンキ! ゲンキ!


ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ

ゴメンネ








彼がゴメンネを50回くらい心から言ってくれたら、
全部ぜんぶなかったことにして、みんなの批判もひとを傷つけることも全部うけとめて 
もういっかいなんとかできないかしら、

なんて考える時が、クッキーと暮らしだしてからもほんとうはときどきまだあった。 


そのときいつも、自分の行動とほしかったことと希望と欲望と状況いろいろ思い出して、 
別にじぶんがえらんでこうなったというものでもなく・いろいろなことが絡み合っての結果なんだから、



彼が50回(すくな!)ゴメンネを言ったからどうなるという問題ではないのに、と思い直した。






20433月の東京はまだまだ肌寒くて、まだ雪が降る日もある。

わたしは薄い紫の薄手のニットがほしい
体にぴたっとくっつくようなセクシーだけどあったかいやつ


もしも今度の日曜日にやるの女体盛りのバイトでお金がもうかったら買おうかな


そして髪を明るい茶色にそめて、パーマもかけたい
ちょっとセクシーな感じにしたい!


もう寝よう!だけど寝る前にいつも
たとえば昨日の夜の寝る前のことを思い出す
わたしたちはまだ一緒にねるのもそんなになれてなくて、
まだ違和感があるんだけど
ずいぶん一緒にねてる
でもいくら一緒に寝ても
特にわかることなんてないのに不思議


わたしはずいぶん年をとったけど、でもまだずいぶん不完全だし
寝る前と明け方はずいぶん不安定だ






2041年の時点で世界の人口は100億人に達したらしい。

そんなにたくさんの人間がいる中で、
好きな人を2人にしぼれただけ偉業だと、

東京はチャットで誉めてくれた。



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