最後に東京に大雪が降ったのはわたしがまだ15歳のときで15年 前で
愛犬に赤いレインコートを着せて雪の降る公園を走らせた。
それから15年たった2043年の年明け、東京では初雪を観測、 朝までに40センチの降雪量を記録した。
そしてこの東京にまだ友だちの東京がいたとき、 わたしたちは新年に狂ったやつしか来ない飲み会を企画したのだっ た。
東京はずっと長い間友だちだけど、未だに謎の多い人物で
性別とか年齢とか属性とかではかることのできない、
誰の中にもいるいつも心の中でひっかかってしまうようなひとをま とめたような細分化したような
そんな人間で
わたしのなまえは秘密ちゃん
東京の名前は東京で、 親がばかだったから今世紀最大のドキュンネームをつけられた。
わたしたちが生まれる前年の2012年までは、 日本でも地名を名前にすることは禁止されていたのだけど、ちょうど2013年にそれが解禁され、 喜んだ東京の両親は東京に自分たちの生まれ故郷の街の名前をつけ たかった。
大きく煌びやかな都市の名前を背負ってしまった東京は、 とにかくまわりに人の絶えない、
けれどもその中でいつもひとりでいることを好む変わり者に成長し た。
いまわたしの手の中に白い小石がみっつある。
今、それのひとつにキリで穴をあけて、ひもを通すところ。
昔から、未来はダウジングで占うことに決めている。
生れたその時からインターネット上に個人アカウントを持つ私達は、その膨大な情報の中から
なんとか自分とうり二つのエイリアン を検索してはつながって、自分のみらいをその中に探そうとしてしまうんだけど、 それはあまりよくないことだと小さい頃わたしは悟り、
もっと原始的であいまいで、 だけども明確で力強く未来を知る方法として、 ダウジングを選択した。
(小学校2年生の時読んだ科学雑誌にかいてあったのがきっかけ。 )
ダウジングはいつもふたつの未来しかもっていなくて、YESだっ たら右NOだと左に回る。
石を紐につるしたら垂らして質問すればいい
明日地球がなくなる?
戦争が近いうちに起る?
明日死ぬ?
今年のうちに妊娠する?
恋人はわたしが好き?
今夜はカレーを食べるべき?
東京はかえってくる?
ダウジングというのは実は結局、 自分の紐を持つ手が無意識にうごいて答えを導き出すもので、
だから本当にじぶんがわからないことだけは石が右にも左にもまわ らないことがある。
東京がかえってくるかはわたしにはわからない。
だから東京がいたときのはなしをする・
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